しっかり違いを理解しよう!聴覚補償と情報保障

聴覚障がい者に対する「聴覚補償」と「情報保障」は混同されがちです。よく聞かれるのは、「ロジャーやFMを付けているのに、なぜ情報保障が必要なの?」という声です。例えば、お子さんが通う学校に「情報保障を入れて下さい」とお願いする場合、なぜ「情報保障」が必要なのかをしっかり伝えるために保護者も知識が必要になります。

 

「補償」とは

 

「補償」とは、損害を埋め合わせて償うことです。「損害補償」など身近な言葉で説明すると、「あ~、そうか」と相手も理解しやすいと思います。

「聴覚補償」でいうところの「補償」とは、残存聴力を補うために補聴器や人工内耳を利用することであったり、学校に席順を前の方にして欲しいとお願いすること。また、ロジャーやFMを付けて先生の声を聴くことなども聴覚補償です。つまり、自分自身の障がいを軽減したり改善したりすることを指します。

この補償の特徴は「自分の残存聴力を最大限使うこと」なので、効果は個人の聴力や環境で大きく変わってきます。忘れないでいただきたいのは、人工内耳や補聴器をしても、完全に聞こえるようにはならないということです。

 

「保障」とは

 

「保障」とは、ある状態が損なわれることのないように、保護し守ることを意味します。「安全保障」とか「社会保障」と同じ意味だと説明すれば伝わりやすいと思います。

「情報保障」でいうところの「保障」とは、音声を字幕に変えてスクリーンに映し出すこと、テレビの字幕、手話通訳や、ノートテイクなど、情報が伝わりやすくするために環境を整えることを指します。

学校では、まだこの「保障」が十分ではないのが現実です。

 

なぜ「情報保障」が必要なのか?

 

聴覚障がい者の生活の質、学習環境の質を高めるためには、その障がいを「補償」するだけにとどまらず、伝わりにくい情報を周囲から「保障」するための環境改善も重要です。それには、聴覚障がい者に直接対応する周囲の人々の理解がなければ何も進展しません。

現在は「法律の改正」「時代の変化」「IT技術の発展」と共に、「聴覚補償」の時代から「情報保障」の時代へと移り変わる過渡期にあるといえます。

私たち保護者は、子どもたちが何を知りたがっているのかを十分に理解した上で、「聴覚補償」と「情報保障」のバランスを見極めながら、周囲の人々へ理解と協力をお願いし、子どもへの総合的な支援を考える必要があると思います。