講演会「きこえないってどういうこと?」

平成29年10月30日(月)、三島市立沢地幼稚園ホールにて、年長児と保護者を対象とした講演会を行いました。「きこえない」ということがどういうことなのか、講師のユカコさんが紙芝居や時に子どもたちの意見を取り入れながら、分かり易くお話しをして下さいました。簡単ですが、講演会の内容をご報告いたします。

 

 

みんなにしってほしいこと

 

ユカコさんの紙芝居は「みんなにしってほしいこと」という題から始まりました。

 

ユカコさん 「皆んなは遊んでいる時に呼ばれたら気がつくよね。周りがうるさくてもお話しが分かるし、先生のお話しもちゃんと聞こえるよね。こんなことがあたり前にできる皆んなのお耳は本当にすごいんだよ!!」

 

子どもたち 「そうなんだ~」

 

ユカコさん 「じゃあ、聞こえない人がどういう風に聞こえているか皆んなは分かるかな?人から言われたことが聞き取りにくかったり、こうえんへいこうがおうえんにいお~って聞こえちゃったりするんだよ」

 

子どもたち 「え~(びっくり)」

 

ユカコさん 「少しむずかしいお話しだけど、皆んな聞いてくれるかな?」と補聴器と人工内耳についてのお話しをして下さいました。

 

補聴器と人工内耳のお話し

 

ユカコさん 「私は補聴器をしているんだよ。補聴器は音を大きくしてくれる機械なんだよ。これをつけていると「おはよう」って大きな音で聞こえるんだ。でも聞こえない人は、さっき話したみたいに「こうえんへいこう」が「おうえんにいお~」って聞こえちゃうから、音が大きくなっても「こうえんへいこう」が「おうえんにいお~」って聞こえちゃうんだ」

 

ユカコさん 「人工内耳は、外から聞こえる音を◯△☓・・・みたいな色々な電気信号に変えて、直接脳に伝えているんだよ。補聴器より聞こえがいいんだよ。ちょっと難しい話だね。じゃあ、機械を外すとどんな風に聞こえると思う?」

 

子どもたち 「わーわーわーって聞こえる」

子どもたち 「何も聞こえないんじゃない?」

子どもたち 「さっきみたいに、おうえんへいお~って聞こえる」

子どもたち 「ぼーんって聞こえる」

 

ユカコさん 「うん、そうだね。人それぞれ色々あ聞こえ方をするんだけど、聞こえなくなっちゃう人もいるね。車や電車の音も聞こえなくなっちゃうと、とっても危ないよね。だからね、私たちにとってこの機械はとっても大切なお友だちなんだ」

 

子どもたち 「そうなんだ・・・(真剣そのもの!)」

 

ユカコさん 「これから話すことは、私が幼稚園や学校に通っていた時に困っていたことなんだけど、どんなことに困っていたか、そんな時皆んなだったらどうするか、一緒に考えてくれるかな?」

 

聞こえにくくて困ること

 

ユカコさん 「(呼ばれても気付かない)こんな時、どうしたらいいかな?」

 

子どもたち 「呼ばれているよって教えてあげる」

子どもたち 「肩を優しく叩いてあげる」

子どもたち 「呼ばれてるよって優しく肩を叩いてあげる」

子どもたち 「大きな声で言ってあげる」

 

ユカコさん 「じゃあ、先生が今から絵の具でお絵かきをします。でも一色しか使いませんって言った時、周りのお友だちの様子を見て絵を描くことはわかったけど、一色しか使わないってことは聞こえていなかった・・・そんな時はどうしたらいいかな?」

 

子どもたち 「色は一色だよって教えてあげる」

 

ユカコさん 「うんうん、皆んなそんなことがわかるなんてすごいね!!じゃあ、皆んなの話がわからない、どうやって話に入ったらいいかわからない時はどうしたらいいかな?」

 

子どもたち 「順番に話す」

子どもたち 「一人ずつ聞いて、お話しを一人ずつ聞いていく」

子どもたち 「友だちが大きな声を出さなければ聞こえるよ」

子どもたち 「じゃんけんで順番を決めて話す」

 

ユカコさん 「そうだね。みんな色々考えてくれてありがとう!!誰が話すのか分かりやすくしてくれるといいかもね。それとか、今から◯◯を作ろうとしているんだよって話をまとめて教えてくれるのもいいかもね」

 

ユカコさん 「それからね、皆んなが盛り上がって楽しそうに話していると、今の何の話?って聞きづらい時もあるんだよ。そんな姿に気づいたら教えてあげてほしいし、工夫して教えてあげてほしいな」

 

子どもたち 「うん」

 

ユカコさん 「もっと難しいお話しだけど、聞いてくれるかな?」

 

色んな人と仲良くなれるといいね

 

ユカコさん 「地球には色んな人がいるね。外国の人、杖をついているお年寄り、車椅子に乗っている人・・・皆んなそんな人に会ったことはあるかな?」

 

子どもたち 「うん、あるよ~!」

 

ユカコさん 「大人でも、今まで耳の聞こえない人に会ったことがない人がいて、そういう人に会った時、どうしたらいいかわからない人もいるんだよ。でも、皆んなはもう会ったことがあるから大丈夫だね。人はそれぞれ得意なことや苦手なことがあって当然なんだよ。だから、その人が苦手なこと、困っていることに気がついたら、さっき皆んなで考えたみたいに気にかけてあげて欲しいな。そんなことができる皆んなはとっても素敵だよ!!」

 

その後

 

講演会で使った紙芝居はユカコさんから幼稚園に寄贈されました。先生方も幼稚園の財産として、今後も利用して下さるとのことでした。年長組の担任の先生は、さっそく講演会に出席できなかった保護者へ、紙芝居のイラストをふんだんに盛り込んだ分かりやすいクラスだよりを描いて配布して下さいました。

 

出席して下さった保護者の方からは「すごくいい話が聞けてよかった」「一緒に小学校へ上がるのが楽しみだよ」「ずっと気になっていて聞けなかったことが分かって本当に良かったよ」「家に帰ったら子どもと話すよ」など嬉しい感想をいただきました。気になっていても聞けないこと、は当事者が思っている以上に周りの人にはたくさんあるのだということもわかりました。周りの人にどんどん助けてもらえるように、当事者からの発信の大切さを感じました。

 

講演会を終えて

 30分以上の難しい内容も含んだお話しを、子どもたちは最後まで真剣に聞いてくれていました。ひとりひとりが「大事な話だ」「ちゃんと聞こう」という気持ちを持ってくれているように感じました。また、ユカコさんの質問にも的確に、そして優しい言葉で返答している姿に、子どもたちの持つ優しさ、そして年長さんなりの心の成長というものを強く感じました。

 今回、子どもたちが考えてくれた「友だち」との関わり方は、実際同じような場面に遭遇した時、言っていた通りにできるようになるまでには、まだもう少し時間がかかるかもしれません。でも、この時に聞いた話をいつか思い出して、行動ができる日がくることを楽しみに待ちたいと思います。ユカコさんが最後に話してくれた「色んな人と仲良しになれるといいね」というお話しは、「耳が聞こえない」という人とのことだけに限らず、全ての人と関わる時に大切なことだと思います。人はみんな違います。違っていて当たり前なんです。世の中は多様性に満ちていて、私たちひとりひとりは誰かに支えられて生きています。「みんな違ってみんないい」と誰もが心から思えるような世の中になるように、私たち大人も変わっていく必要があるのではないでしょうか。